非居住者の不動産売買事例

海外勤務中に親から相続した土地を売ろうと思ったら、日本には住民票もなく非居住者なのでなかなか大変でしたというお話。

ご相談に来られた方は、海外で10年以上お住まいのAさん。
日本にある親から相続した土地を売りたいということでした。

1年以上海外で勤務する給与所得者は、日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者となります。

不動産売買には通常、身分証明書、住民票、印鑑証明書、実印を求められますが、非居住者の方は、身分証明書はパスポートで証明できても、住民票はもちろんない。

海外は通常サインなので実印もない。それに伴い印鑑証明書もありません。

さて、どうしましょう・・。

一つずつ解決します。

  • 住民票、実印、印鑑証明書がない
  • 日本に口座がないので入金する場所がない
課題解決方法
住民票、実印、印鑑証明書がない代わるものとして、大使館で発行するサイン証明を取得することで解決
日本に口座がないので入金する場所がない日本に住んでいる兄弟に代理人になってもらい、兄弟の口座に入金することで解決
(※ 念のため税理士に確認を取りました)

なんとなく売買する準備ができてきましたが、ここで更に問題が。

買主(居住者)も売主(非居住者)も源泉徴収税が発生します。


・売主(非居住者)の手続き

非居住者は、その所得のうち日本の国内で発生したもの(国内源泉所得)についてのみ日本の所得税が課税されることから、非居住者が日本国内にある不動産を売却したときの所得に対しては、日本で所得税が課税されることとなります。売買代金(実際に入金される金額)は、売買代金から源泉徴収税額10.21%が控除された「89.79%相当額」が入金されます。

確定申告の際に源泉徴収された金額を証する書類の提出が必要となりますので、買主からは源泉所得税の「納付書」又は「支払調書」を、確定申告までに受け取ります。

その後、売却年の翌年に確定申告書を税務署に提出します(諸条件を満たしていれば居住者と同様に、居住用の3,000万円特別控除等の適用を受けることができます)。
確定申告で税額を計算した結果、還付または納付が決まります。


・買主(居住者)の手続き

非居住者等から土地等を購入した方の方も、源泉徴収をする必要があります。

売買代金の支払いの際、支払金額の10.21%相当額を源泉徴収して税務署に支払う義務があります。手付金、残代金、固定資産税等の精算金など支払いの都度、売買代金の10.21%相当額を源泉徴収します。売主に支払う金額は10.21%相当額を控除した金額(89.79%相当額)となります。

わかりやすく書くと…売買代金10,000,000円の時は源泉徴収額が1,021,000円です。
売主に支払う金額は源泉徴収額を控除した金額ですので「8,979,000円」となります。
その後、源泉所得税の「納付書」又は「支払調書」を売主へ渡して完了となります。

その後

Aさんですが…
最初に購入希望した方は「源泉徴収?面倒だから別にします」と、残念な結果となりましたが、他の方で無事に売却となりました!幸いに確定申告に詳しい方でしたので源泉徴収についても理解が早く、来年の確定申告に向けて順調に進んでいてAさんも一安心したとおっしゃって下さいました。

詳しく知りたい方は、お気軽にご連絡ください!